ギフト券バブルの終焉:2025年を生き残るデジタルギフトはどれか?

2025年を生き残るデジタルギフトはどれか?

日本のギフト券市場は、デジタル化により拡大を続けてきましたが、2025年現在、その様相は大きく変わりつつあります。「ギフト券バブル」を経て市場が成熟し、多様なキャッシュレス決済が登場した今、「どのギフト券を選べば良いのか?」「法人利用に最適なデジタルギフトは?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本稿では、日本のデジタルギフト/電子ギフト券市場に精通したプロの視点から、市場の転換期、主要ブランドの最新動向、関連法規制、今後の展望をデータと洞察に基づき徹底解説します。この記事を読めば、2025年以降も「使える・喜ばれる」デジタルギフト選びの指針が得られるはずです。ギフト券の人気ランキングや、法人向けのデジタルギフト活用事例についても解説します。

市場全体の変遷:2010年から2025年の市場成長と限界

日本のデジタルギフト市場は、2010年代後半以降、スマートフォンの普及とEC市場の成長より、目覚ましい拡大を遂げました。矢野経済研究所の推計によれば、市場規模は2018年度の1,167億円から2019年度には1,529億円へと成長。その後も拡大傾向とみられます。特にコロナ禍においては、非対面でのギフト需要やオンラインショッピングの増加がデジタルギフトの利用を後押ししました。

しかし、市場の成長曲線は、緩やかです。その背景には、以下の要因が挙げられます。

  • キャッシュレス決済の多様化: PayPay、楽天ペイ、d払いといったQRコード決済や、Suica、WAON、楽天Edyなどの電子マネーが普及し、決済手段の選択肢が増えたことで、ギフト券単体での優位性が相対的に低下。
  • 法規制の強化: 後述する資金決済法やAML(アンチ・マネーロンダリング)関連の規制強化が、ギフト券の発行・流通に一定の制限を加えています。
  • ポイント経済圏の進化: 各社が提供するポイントプログラムが充実し、ポイントを直接ギフトとして贈る、交換するといった代替手段が登場しています。

これらの要因から、市場は規模の拡大から、サービスの質、利便性、ギフトとしての付加価値が問われる成熟期へと移行しています。

ブランド別・盛衰の実例

ブランド別・盛衰の実例

ここでは、日本国内における主要なデジタルギフト券8ブランドに焦点を当て、発行推移、サービス変遷、盛衰要因、2025年現在を分析します。

Appleギフトカード(App Store & iTunesギフトカード)

Appleギフトカード(旧称iTunesカード)は、iPhoneユーザーの増加とApp Store、iTunes Storeでのコンテンツ消費拡大とともに成長しました。2010年代にはアプリ課金手段として若年層に浸透。2021年11月には、App Store & iTunesギフトカードとApple Storeギフトカードが統合され、「Appleギフトカード」 としてApple製品やアクセサリーの購入にも利用可能となり、Apple経済圏内での汎用性が大幅に向上。プリペイドカード利用経験者の21.0%がApp Store & iTunesギフトカードを使ったことがあるとの2020年の調査結果もあり、主要なギフト券としての地位を確立。一部で詐欺への悪用事例が課題ですが、Appleファンへの根強い需要や、高額券の換金需要も根強いため 、現在も存在感は衰えていません。

QUOカードPay

紙媒体のギフト券として長年の実績を持つQUOカードが、デジタルシフトに対応すべく2019年3月に投入したのがQUOカードPayです。QRコードで決済できる手軽さが特にコロナ禍での非対面ニーズの高まりを追い風に利用が拡大。紙のQUOカードとQUOカードPayを合算した発行額は、2020年度に過去最高を記録し、2023年3月期の発行額は721億円 。「どこでも使える安心感」QUOカードの強みを引き継ぎつつ、デジタルならではの利便性を提供することで、法人プロモーションや従業員へのインセンティブとして需要を獲得しています。

Amazonギフト券

Amazonギフト券は、Amazon.co.jpで利用できることから、デジタルギフト市場でトップシェア を誇ります。2020年の調査では、プリペイドカード利用経験者の55.2%がAmazonギフト券を「使ったことがある」と回答するなど、普及率は他を圧倒。「もらって嬉しいギフト券」の調査でも41.4%がAmazonギフト券を選択し、贈答品としての絶大な人気を示しています。メールやLINEで手軽に贈れる点 、有効期限が10年間と長い点も大きなメリットです。近年は不正対策として、高額購入制限や一部プリペイドカードからの購入制限が行われるなど対策が進められていますが、2025年現在もその市場影響力は健在です。

Google Playギフトカード

Google Playギフトカードは、Androidスマートフォンユーザー向けの公式ギフトカードとして2012年に日本で販売開始されました。主にGoogle Playストアでのアプリ、ゲーム、映画などに利用されます。スマホゲーム市場の拡大とともに需要が増加し、2010年代中盤のゲーム全盛期にはコンビニでの購入が一般的な光景でした。しかし、キャリア決済やQRコード決済など、アプリ課金の選択肢が増えたことで、存在感は薄れています。2020年時点での利用経験率は10.7%程度。Androidユーザーへのピンポイントなギフトとしては有効です。

楽天ギフトカード(楽天ポイントギフトカード)

楽天グループが発行するギフト券は、主に楽天ポイントギフトカードと楽天ギフトカード(楽天キャッシュ)の2種類があります。楽天ポイントギフトカードは2013年サービス開始で、楽天市場など楽天経済圏で利用できる点が強みでした。しかし、一般向けの店頭販売は終了し、現在は法人向けの提供が中心。一方、2022年10月に登場した楽天ギフトカードは、電子マネーである楽天キャッシュをチャージでき、楽天ペイを介して楽天経済圏外の多くの店舗でも利用可能です 。こちらは楽天ポイントギフトカードからの置き換えを狙った戦略商品と位置付けられており、楽天経済圏の拡大とともに利用シーンの広がりが期待されます。Googleトレンドでは「楽天ギフトカード 使い方」「楽天ポイントとの違い」 等の検索が増加傾向。楽天ユーザーへのギフトとしては、楽天ギフトカード(楽天キャッシュ)の方が汎用性が高い選択肢となりつつあります。

nanacoギフトカード

nanacoギフトは、セブン&アイ・ホールディングスの電子マネーnanacoにチャージできるギフトサービスです。2008年に電子コード版が開始され 、カードタイプも販売されました が、2019年4月をもって一般向けの店頭販売を終了しました。現在は法人向けインセンティブや、自治体ポイントなどからの交換先として細々と利用されています。汎用性がセブン&アイグループ店舗に限定される点や、チャージの手間などが消費者への普及を妨げたと考えられます 。AML規制強化の流れも、匿名性が高く転売容易な番号通知型ギフトへの発行者側の慎重姿勢に繋がった可能性があります。Googleトレンド上の検索ボリュームは他の主要ギフト券に比べ非常に低く、一般ユーザーの認知度は低いと言えます。

WebMoney(ウェブマネー)

WebMoneyは1998年にサービスを開始した、オンライン電子マネーのパイオニアです。主にPC向けのオンラインサービス、オンラインゲーム課金などで利用され、匿名性の高さから支持を得ました。しかし、スマートフォンの普及と様々な決済手段の登場により、その利用シーンは限定的となり、発行ピークは2000年代前半と推測されます。現在は特定のコアユーザーに支えられている状況です。KDDIグループ傘下となりau経済圏との連携も模索されましたが、市場拡大には繋がっていません。法改正による高額電子移転可能型プリペイドへの規制強化も影響が大きいと言えます。Googleトレンド上の検索ボリュームも、往年と比べると大幅に低下しています。

JCBプレモカード

JCBプレモカードは、クレジットカード大手JCBが発行する汎用型プリペイドカードとして2013年にサービスを開始。百貨店、コンビニなど、JCB加盟店で利用できる利便性をアピールしましたが、紙の商品券からの置き換えは進みませんでした。「高額を贈る際に体裁が劣る」といった心理的な要因や、「家族で分けて使いにくい」 といった実用性の問題が普及を妨げたと考えられています。2018年にはデジタル版のJCBプレモデジタルも開始しましたが 、2025年3月末で新規販売を終了するなど、サービスは縮小傾向です。さらに2025年10月1日からはチャージ機能が廃止され、使い切り型のプリペイドカードとして改定予定です 。これは、当初想定した繰り返し利用されるプリペイドとしての利用が伸び悩んだこと、法規制への対応も影響しているとみられます。Googleトレンド上の検索ボリュームも、他の主要ギフト券と比べると非常に小さいです。

法制度と規制のインパクト(資金決済法・AML・高額規制)

日本のデジタルギフト券市場は、資金決済法を軸とする法規制の下で運営されています。ほとんどのデジタルギフト券は「前払式支払手段」に分類され、発行元は金融庁への登録や、利用者の未使用残高の保全(供託)といった義務を負います。

近年、影響力が増しているのが、犯罪収益移転防止法(AML法)に基づく規制です。デジタルギフト券が、匿名性の高さからマネーロンダリングなどの不正行為に悪用されるリスクが指摘されてきたためです。

2021年の資金決済法改正では、新たに「高額電子移転可能型前払式支払手段」という概念が導入されました 。これは、電子的なコードなどで発行され、不特定多数に譲渡または換金が容易な高額(例:10万円超)なプリペイドを指します。この区分に該当するギフト券の発行者は、購入時の本人確認(KYC)義務や取引のモニタリング強化といった、より厳格なAML対策が求められることになりました 。TRUSTDOCKの記事などでもそのポイントが解説されています。

今回の改正は、特にオンラインで流通しやすく、高額な取引が可能なデジタルギフト券(例:Amazonギフト券、WebMoney、一部のデジタルコード型のギフト券)に大きな影響を与えています。JCBプレモデジタルが新規販売を終了した背景にも、この規制強化への対応があった可能性が高いです。発行者側は、利用者の利便性を維持しつつ、いかに不正利用リスクを低減させるかという課題に直面しています。この法規制強化は、市場の透明性と健全性を高める一方で、発行・流通コストの増加や、ギフト券の手軽さが一部損なわれるといった側面も持ち合わせています。

トレンド可視化:Google Trendsと検索需要の変化

過去10年間のGoogle検索トレンドを分析すると、日本の主要デジタルギフト券に対するユーザーの関心の変化が明確に見て取れます。

Amazonギフト券とAppleギフトカード(旧iTunesカード含む)は、一貫して高い検索ボリュームを維持しています。特にAmazonギフト券は、毎年ホリデーシーズン(年末)やプライムデーといったイベント時期に検索数が急増する傾向があります。

QUOカードPayは、2019年のサービス開始を境に検索ボリュームが急速に上昇し、デジタルギフトとしての新規参入組の中で確かな存在感を示しました。

一方、Google PlayギフトカードやWebMoneyは、過去に一定の検索ピークがありましたが、その後は緩やかに減少傾向。前述の通り、他の決済手段へのユーザーシフトが進んだ影響と考えられます。

nanacoギフトとJCBプレモカードは、そもそも他のギフト券と比較して検索ボリュームが低く、一般ユーザーへの浸透が進んでいない状況が検索トレンドからも読み取れます。nanacoギフトは2019年の一般販売終了の際に一時的に検索が増えましたが、その後は再び低調です。

全体として、検索トレンドは単なるギフト券名の検索から、「[ギフト券名] 使い方」「[ギフト券名] 使える店」「[ギフト券名] キャンペーン」といった、より実用的な情報やお得な情報に関する検索へとシフトしている傾向が見られます。これは、ユーザーがギフト券の利用方法やメリットを具体的に比較検討していることを示唆しており、SEOコンテンツ作成においても、これらのユーザーニーズに応える具体的な情報提供が重要であることを示しています。

今後の展望:2025年を生き残るギフトの条件とは?

2025年を生き残るギフトの条件とは?

2025年以降、日本のデジタルギフト市場で持続的な成長を遂げ、生き残っていくためには、以下の条件を満たすことが不可欠となるでしょう。

  1. 真の「利便性」の追求: 単にデジタルであるだけでなく、購入、贈答、利用において、ストレスなくスムーズに利用できるかが鍵となります。アプリ連携の容易さ、複数ギフトの合算利用の可否、有効期限の分かりやすさなどが問われます。
  2. 特定の用途・顧客層への最適化: AmazonやAppleのように強力な自社経済圏を持つか、QUOカードPayのようにリアル店舗での利用に特化するなど、特定の用途や顧客層に深く根差したサービス設計が重要になります。「誰に」「どのような目的で」「どこで」使ってもらいたいかを明確にした戦略が必要です。
  3. 「ギフト」としての価値の再定義: 「贈る」「受け取る」という行為に伴う情緒的な価値をどのように付加するかが重要です。デザイン性、メッセージ機能の充実、体験型のギフトとの連携などが考えられます。
  4. 進化する法規制への機動的な対応: 資金決済法やAML規制は今後も変更される可能性があります。発行者は、常に最新の規制動向を把握し、システムの改修や本人確認プロセスの見直しなどを行う必要があります。
  5. データ活用によるパーソナライズ: ユーザーの利用データを分析し、個々に合わせたギフトの推奨やキャンペーン情報の提供など、パーソナライズされた体験を提供し、ユーザーエンゲージメントを高めることが期待されます。

これらの条件を満たすデジタルギフトこそが、2025年以降の市場で生き残り、さらに成長していくことができると考えられます。

まとめとおすすめ(2025年版)

「今、どのデジタルギフトを選ぶべきか?」は、利用目的によって異なります。これまでの分析を踏まえ、法人・個人それぞれのニーズに合わせて、2025年のおすすめデジタルギフトをカテゴリー別にご提案します。

【法人向け:キャンペーン景品・福利厚生・インセンティブに】

配布の手軽さ、受取側の利便性、そして管理のしやすさが重要です。法人向けデジタルギフトの選択肢として有力なのは以下の通りです。

汎用性No.1で確実な効果

Amazonギフト券: その圧倒的な認知度と利用範囲の広さから、誰に贈っても喜ばれる可能性が高いです。デジタルコードでの大量配布も容易で、法人キャンペーンや福利厚生で広く利用されています。

リアル店舗での利用も考慮しつつ手軽さを重視

QUOカードPay: スマートフォンでの手軽な決済が可能で、多くのコンビニや飲食店で利用できます。キャンペーンの即時配布などにも適しており、デジタルギフトとしての導入実績も豊富です。

特定の経済圏の顧客にアプローチしたいなら

楽天ギフトカード: 楽天経済圏での幅広い利用が可能で、ポイントとは異なる「ギフト」としての特別感を演出できます。

Appleギフトカード: Apple製品・サービスを愛用する従業員への福利厚生や、ターゲット層が明確なキャンペーンに有効です。高額なApple製品購入資金にもなります。

【個人向け:誕生日プレゼント・お礼・ちょっとした贈り物に】

相手の好みやライフスタイルに合っているか、贈る側の気持ちが伝わるかが重要です。2025年に贈るなら、以下のデジタルギフトがおすすめです。

相手の好みが分からない・確実に喜ばれたい

Amazonギフト券: Amazonで買えないものはない、と言えるほどの品揃えは大きな強みです。相手がAmazonユーザーであれば、まず間違いなく喜ばれます。デジタルで手軽に贈れる点も魅力です。

Appleギフトカード: iPhoneユーザーやApple製品が好きな友人・家族へのギフトとして最適です。アプリや音楽だけでなく、新しいデバイスの購入資金にも充てられるため、ギフトとしてのインパクトも大きいです。

いつも行くお店で便利に使って欲しい

QUOカードPay: 相手がよく利用するコンビニやドラッグストアでQUOカードPayが使えるかを確認すれば、日常使いに便利なギフトとなります。ちょっとしたお礼などにも最適です。

「○○が好き」という相手にピンポイントで贈る

Google Playギフトカード: Androidユーザーで、特にゲームや特定のアプリに課金することが多い方へのギフトとしては、今でも有効な選択肢です。相手の趣味嗜好が明確な場合に喜ばれます。

2025年のデジタルギフト市場は、単なる「デジタル化」の波だけでなく、法規制、ユーザーニーズの多様化、そして各社の戦略が複雑に絡み合う環境です。今回解説した各ギフト券の特性と市場の動向を理解し、賢くデジタルギフトを活用いただければ幸いです。

参考・出典

矢野経済研究所「商品券・ギフト券/eギフト市場規模推移」(『販促会議』2020年4月号)
リフォーム産業新聞「デジタルQUOカード人気、新規客の獲得に」(2020年4月6日付)
マイナビ2026 (株)クオカード会社概要(2025年3月28日更新)
ITmedia Mobile「QUOカードPayが好調の理由とは?」(2021年1月22日)
itc-check「iTunes Card名称変更のお知らせ」(2017年11月27日)
nanagift「コンビニのアップルギフトカード種類と金額」(2021年)
法人カード比較コンシェル「プリペイド・ギフト券利用者調査2020」
楽天プレスリリース「楽天ポイントギフトカード販売開始」(2013年4月1日)
giftee for Business「nanacoギフトとは?」(2025年4月17日)
PaymentNavi「ギフト市場における紙媒体とデジタル化」(2022年2月16日)
auペイメント「沿革」(2023年)
総務省資料「資金決済法改正に係る内閣府令案」(2022年10月5日公表)
TRUSTDOCK「改正資金決済法のポイント」(2022年8月19日)
Deloitte「高額電子移転可能型前払式支払手段への対応」(2022年)
Yahooニュース(求人情報)「JCBプレモカード案内」
ファミリーマートニュース「JCBプレモカード取扱い開始」(2015年)
JCB「JCBプレモカードに関するお知らせ」(2024年・2025年)
その他、各公式サイト・サポートページ(例:Apple、Amazon、Google、楽天、セブン&アイ、WebMoneyなど)

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